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The Confirmation 堅信礼/ウォルトに教えてあげたこと

アメリカ映画 (2016)

ジェイデン・リーバハー(Jaeden Lieberher)が、SF的な映画『Midnight Special(ミッドナイト・スペシャル)』(2016)に続いて出演した家族ドラマ。設定が『ヴィンセントが教えてくれたこと』(2014)と極めてよく似ている。前作では、隣のダメ親爺ヴィンセントと、シングルマザーと2人暮しのオリバーとの掛け合いが面白く、ビル・マーレイの最高の演技もあって、独自の世界観を味わわせてくれた。本作では、離婚して再婚した母に引き取られたアンソニーが、飲んだくれで仕事も満足にしない父と、久しぶりに過ごすことになった週末の土日の2日間に起きた椿事を描いている。台詞の多いのは父親役のクライヴ・オーウェンだが、この映画はジェイデンのために作られたようなもの。ジェイデンのユニークな個性を引き出すような状況設定や台詞が用意されている。映画そのものは、父親役に深みがないので(俳優の責任というよりは脚本の責任)、ストーリーの展開が一方通行になってしまい、かつ、コメディ度も低く、残念ながら秀作とは言えない。ただ、少し大きくなったジェイデンの、彼らしい表情や仕草は十分に楽しめる。次回作の『The Book of Henry(ヘンリーの本)』(2016)では、タイトル・ロールのヘンリーを演じ、『ルーム』のジェイコブ・トレンブレイが弟役に入っているので、非常に楽しみだ。今が旬の、今活躍しているベストの子役と言える。

映画の題名である堅信礼は、カトリックの秘跡の1つで、洗礼・聖餐と並んで最も重要な信仰儀礼とされている。主人公のアンソニーは、次の週末に聖餐(聖体拝領)と堅信礼を一緒に受けることになっていて、しばらくは信心深い、清く正しい生活を送らなくてはならない。そんな時、母と継父が、その肝心な週末に、教会でマリッジエンカウンター・ウィークエンドに参加することになり、アンソニーは離婚した父に預けられる。母は、当然、アンソニーが平穏無事な週末を過ごすことを期待している。しかし、父は、アルコール依存症のせいもあって、内装仕上げの専門職から遠ざかり、経済的にも困窮状態にあった。そんな父に、週末明けにようやく仕事が入るが、運悪く、仕事に欠かせない大切な道具箱が盗まれてしまう。父とアンソニーは、何人もの怪しい人物と会いながら、必死で道具箱を見つけ出そうとする。そのためには、生来真面目なアンソニーも、嘘をついたり、悪い言葉を使ったり、欲望を抱いたり、果ては、盗んだり、拳銃を人に向けたりと、敬虔なキリスト教徒にあるまじきことをいっぱいすることになる。ちょうど、『ヴィンセントが教えてくれたこと』で、酒場に入ったり、競馬をしたり、「夜の女」と口を聞いたりしたように。しかし、それでアンソニーが不良化することはなく、逆に、これまで疎遠だった父との間に信頼関係を築くことができ、父の更正にも役立つことになる… 『ヴィンセントが教えてくれたこと』で、ヴィンセントを立ち直らせたように。『The Confirmation(堅信礼)』という題名は、映画の内容に必ずしもそぐわない。それは、アメリカの批評家も指摘している。ここでは、父の名がウォルトなので、日本語の仮題に、前作をもじり、『ウォルトに教えてあげたこと』の副題を添えた。

ジェイデン・リーバハーは、撮影時は11-12才くらい。そして、貫禄は十分。クライヴ・オーウェンを初めとする大人の俳優を完全に食っている。飄々としながらも、機転がきいて、誠実かつ無謀なところもある。そうした役柄にぴったりの少年だ。彼には、話した後、口元をきゅっと締める癖がある。子役の中には、ポカンと口を開け気味の少年が多いが、ジェイデン・リーバハーや、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のトマス・ホーンは、話す時以外は口をしっかり閉めている。如何にも秀才といった感じだ。


あらすじ

信心深い母が、息子のアンソニーを連れて教会に来ている。週末を、離婚した夫に預けるので、その前に「身を清めさせる」ためだ。母は、「罪について ちゃんと考えてる?」と息子に訊き、「十分 考えてきたよ」の返事をもらうと、「じゃあ、告解室に行きなさい。急ぐのよ。行かないといけないから。適当に飛ばして、要点だけになさい」と命じる。告解室に入って行ったアンソニー。「お許し下さい。僕は罪を犯しました」と言い(1枚目の写真)、神父から「神父様」と注意される。決まり文句を抜かしてしまったのだ。一瞬とまどうアンソニー。神父が、「お許し下さい、神父様」と、再度促すと、その部分はちゃっかり省略して「僕は罪を犯しました」とだけ受ける。最初からコミカルだ。「最後の懺悔から8週間経ちました。僕の罪です」。懺悔に訪れなかったことが、自分の犯した唯一の罪だと思っているアンソニーは、そこで黙ってしまう。神父の方は、今のは前置きだと思ったので、「それで? 君の罪は何だね?」。「他には 思い当たりません」。「君は、この2ヶ月、ママやパパに恥じることは 何もしてないと言うのかね?」。「パパには ほとんど会っていません」。「ママに 嘘ぐらい?」。「いいえ」。「他の誰かに 嘘ついたろ?」。「いいえ」。「今、私に 嘘をついてる」。「ついてません」。「男の子が、嘘なしでいられるはずがない」。私は、告解室に入ったことがないので、カトリックの神父が、こんな誘導尋問的な発言をするかどうかは知らないが、ユーモラスな出だしであることに間違いはない。「多分、1回… 学校で 女の子に『私のクッキーおいしい?』と訊かれました。僕は『はい』と答えました。いけなかったでしょうか?」。何とも心優しい嘘だ。神父は、「汚れた考えは、どうだね? きっと 何度か持ったはずだ」。「『汚れた考え』って?」(2枚目の写真)。如何にも困った顔のアンソニーが面白い。「誰かに、悪いことを 考えたんじゃないかね?」。「なぜ、僕が そんなことを?」。「性について考えたろう?」。「それって どんな考えなんです?」。カマトトなのか無垢なのか? カマトトだと信じ込んでいる神父は、「お聞き。時間はある。しばらく、そこで考えてなさい」。教会の外では、母がイライラして待っている。息子はちっとも出て来ないし、預ける相手の別れた夫もちっともやって来ない。実は元夫のピックアップのエンジンがなかなか掛からなかったのだ。ようやく到着した元夫に、「週末、ホントにアンソニーの面倒 見れるの?」と念を押す(3枚目の写真)。「ああ、できるとも。いつ戻るんだ?」。「明日の4時頃」。「どこに行くんだ?」。「教会で、マリッジエンカウンターのウィークエンドが開かれるの」。マリッジエンカウンターとは、夫婦が互いに深く理解し合う生き方を体験するカトリックの全世界的な活動の1つ。そしてさらに母は、来週、息子に初聖体拝領と堅信礼を同時に受けさせるつもりだと告げる。「明日のミサには必ず行かせて」と言い、さらに、「来週の秘跡の前だから、いい子でいないと。だから、面倒に巻き込まないでね」と釘を刺す。「いったいどんな面倒がある。1日中 家にいるのに」と元夫。
  
  
  

告解室では、しびれを切らした神父が、決まり文句的に、「他に 罪はないのかな、我が子よ?」と声をかける。それに対しアンソニーは、「あなたの子じゃありません」。「君は神の子だ」。「あなたは神じゃありません」。「私は 地上における神の代理人だ」。「僕は、神の子はイエスだと思っていました」。いい加減うんざりした神父は、「『我らが父』を5回、『アベマリア』を4回 唱えなさい」「父と子と聖霊の名において、汝の罪を許す。行きなさい。神の平和の内に」と言って懺悔を打ち切る。外では、母が、「週末には 飲まないって、約束して」と迫る。「もう 飲んでない。飲んだとしても、控え目にしてる」。この返事は自己矛盾している。それに気付いた母は、「私は真面目なの。前に経験したでしょ。もう一度やったら終わり、二度と会わせない。だから約束して」。「約束なんかしない。するもんか」(1枚目の写真)。元妻の失礼な言い分に対する反発であろう。教会の中では、アンソニーは、神父に言われたように、「天にまします 我らの父よ」と唱え始めるが(2枚目の写真)、キリスト像を見て、畏れたように逃げ出してしまう。ようやく教会から出てきたアンソニーに、母が「えらく 時間かかったわね?」と声をかける。父:「一体いくつ戒律を破ったんだ?」。「そんな多くないよ」。母:「神父さんが命じた祈りの言葉。全部 言った?」。「うん、ママ、全部」(3枚目の写真)。もう嘘をついてしまった。かくして、アンソニーは父と一緒に週末を過ごすことになった。
  
  
  

内装仕上げの専門職をフリーでやっている父親は、酒びたりになってから仕事がほとんどなく、家賃の支払いにも事欠く状態。アンソニーを家に連れて帰る途中で飲み屋に寄って情報収集にあたる。ピックアップを駐車場に停め、「仕事のきっかけをつかんでくる。トラックで待ってろ。すぐ戻る」と言って、中に入って行く。アンソニーが窓から横を見ると、偶然、隣のピックアップに友達のアレンが乗っている。寄ってきたアレンに、持っている板チョコの半分を割って渡す(1枚目の写真)。そして、おもむろに開いた本が、ビル・ナイが2014年に書いた『Undeniable: Evolution and the Science of Creation(否定不可能―進化と創造の科学)』。とても小学生の読む本とは思えない。開いたページは、309ページもある厚い本の真ん中辺りなので、そこまで読んできたということだろう。しかし、読んでいても、父の帰りの遅いことが気になる。ひょっとして、中で酒を飲んでるんじゃないかと(2枚目の写真)、意を決して飲み屋に向かう。入口で、出てきた2人連れとぶつかる。「おい、気をつけろ。どこへ行くつもりだ?」(3枚目の写真)。小学生が1人で飲み屋に入ろうといていれば、不審に思うのは当然だろう。ぶつかった男は、その直後、「トラックの中で遊ぶな!」と言ってアレンを叩くので、アレンの父親だと分かる。もう1人の白いジャンパーを着た男が、後で重要になる。
  
  
  

単身 飲み屋で入っていったアンソニー。父を見つけて駆け寄る。父と一緒に座っていた2人が先に見つけ、「おい、おい、何しに来た?」と声を掛ける。「別に」。「そりゃ、構うなってことか、坊や?」。ようやく息子に気付いた父が、「おい、すぐだと言ったろ」。息子をこんな所に置いておけないので、「話があったら、知らせてくれ。何でもいい」と頼んで早々に引き上げる。再び車に乗り、家に帰る途中で、お腹の空いたアンソニーが、「ハンバーガー・ハットに寄れる?」と訊く。「食い物があるのに、何で散財する? サンドイッチを作ってやる」。つまり、父には、そのくらいお金がないのだ。
  
  

家に着くと、父はアンソニーにサンドイッチを用意するが、自分では「腹が空いとらん」と食べない。TVで古い白黒の映画を観るだけの侘しい時間。アンソニーが、「で、僕たち 何するの?」と訊くと、「何のことだ?」。「週末だよ」。父には何のプランもない。久しぶりに会った息子なのに、心ここにあらずといった雰囲気だ。その時、電話がかかってくる。それは、久しぶりの仕事の依頼だった。「ええ、道具は揃ってます」と保証し、「月曜の朝9時に」と約束して電話を切る。さっきまでと違い、活力に満ちた顔で、「月曜に仕事ができた」と告げ、「トラックに行き、大きな箱の鍵を外して、木の道具箱を持ってきてくれ」と頼む。「古いノミやナイフの入ったやつ?」。「研ぐの 手伝ってくれ」。「いいよ」。アンソニーがピックアップの荷台まで取りに行くと、南京錠が外れていた(1枚目の写真)。不審に思い、錠を取って外箱を開いてみると、中はからっぽ。盗まれたのだ。アンソニーは、家に走って戻り、「ないよ」と報告する(2枚目の写真)。「ないって、どういうことだ?」。急いで見に行く父。「鍵はかかってたか?」。「うん。だけど、閉めてなかった」。父は、アンソニーを見ると、「飲み屋で トラックを離れたな」と責めるように言う。「数分だよ」。「トラックにいろと 言ったろ」。「鍵をかけ忘れたんだ」(3枚目の写真)。「酔っ払うと、いろいろ忘れるから」。そして、「新しいの、ないの?」と訊いてみる。「あれは 特別なんだ。手に入らないし、高価なものだ。もしオットーから借りれなかったら、盗んだクソ野郎を見つけ出さないと。でないと、終わりだ」。
  
  
  

オットーは、父と同職で、既に引退した友人。しかし、2人がオットーに会いに行くと、「しばらく前に売った。そんな昔じゃない。10年かな」と、のんびりした返事。しかし、「ガイ・ビショップに訊くといい。いい奴だ。引退したんだ。いろんな奴を知ってる。盗んだ奴を知ってると思う」と示唆してくれる。「警官だった?」。「泥棒だった」。「でも、今は いい奴なんだな?」。「大抵の奴より いい」。「大抵の泥棒か、大抵の人間か、どっち?」。「泥棒。だが、今はいい奴だ。信仰を見出した」。「信仰を見出したなら、俺の道具も見つけてくれるだろう」。という訳で、ガイ・ビショップに会いに行く。その途中で、アンソニーが父に、「なぜ、仕事してないの?」と訊く。「どういうことだ? 仕事はある。俺は、内装仕上げの専門家だ」。「定職に就いてないよね」。「俺は、フリーランサーだからな。やりたい仕事を選ぶんだ」。「ママは、ほとんど働いてないって」。別の飲み屋の前で駐車し、「ここで待ってろ。長くは かからん」と言って、店に入って行く父。アンソニーが見回すと、隣がハンバーガー・ハットの店。車の小銭入れに溢れているコインを総ざらいして、こっそり買いに行く。一方、飲み屋の中では、事情を聞いたガイ・ビショップが、「考えさせてくれ」と言い(1枚目の写真)、「ヴォーン・ベネット 知ってるか?」。「一度、一緒に仕事しただけだ。彼が盗んだのか?」。「いいや。彼は、この辺りの奴は みんな知ってる。もしヴォーンが口を開けば、道具も戻ってくるだろう」と助言する。外では、ハンバーガーをテイク・アウトしてきたアンソニーが、隣のピックアップの陰で、大急ぎで食べている。そこに父が戻って来たので大慌て。食べ残しを丸めてポケットに入れると、タイミングを見計らい(2枚目の写真)、父の背中を掠めて父のピックアップの助手席側まで全力ダッシュ(3枚目の写真)。父と同時にドアを開けて車内に入る。「何してる? なぜ、トラックから出た?」。「外に、いたかったから」(4枚目の写真)と平然と答えるアンソニー。2つ目の嘘。
  
  
  
  

さっそく、ヴォーン・ベネットの家に向かう2人。アンソニーは、そこで、さっき飲み屋の駐車場で会ったばかりのアレンと会う。「やあ、パパいる?」。父親同士は面識があっても、お互いの子供は知らない。ヴォーン:「あんたの子?」。父:「ああ、アンソニーだ。話せるか?」。「もちろん。中へ」。彼は、アンソニーが、飲み屋に入る前にぶつかった男だ(1枚目の写真)。ヴォーンはアレンに、「アンソニーと 裏で遊んでろ」と命じる。家の中では、父がヴォーンに事情を説明している。「知ってて 盗んだんだ。この町には 一握りしかいない… 使い方が分かり、価値を知ってるのは」。「道理にかなうな。心当たりの場所は?」。「ザ・シグナルじゃないかな」。これは、さっきの飲み屋。ヴォーンは、さっきそこにいたとは言わず、「シグナル? 俺は二度と行かんな。ソースが水っぽすぎる」と口を濁し、ドレイクなる人物を紹介する。「えらく臆病だが、頭が切れる。いい奴だ。あなたが行くって話しとくよ」。一方、裏庭では、アレンがアンソニーにコオロギを見せていると、そこに兄がやって来て、コオロギを入れたコップを取ると、コオロギを踏み殺す。睨みつけるアンソニーに、「どうかしたか? 可哀想か?」と訊く。「ううん」(2枚目の写真)。怖いから付いた嘘。「なら、お前もやれ」。「意味がない」。「やった方がいいぞ」。脅されて、踏み殺されたコオロギを踏むアンソニー。涙が浮かぶ。「昆虫に 泣いてらぁ」。しかし、悪いと思ったのか、アランの兄は、「なあ、悪かった。じゃあこうしよう。埋め合わせに、銃を撃たせてやる。ウサギ飼ってるから、小屋でウサギ撃てよ。面白いぞ」。「ウサギなんか 撃ちたくない」。「ボコボコにされたくなかったら、ウサギを撃つんだ」。そう言うと、アンソニーの手に無理矢理 拳銃を握らせる。拳銃を持った途端、それをアランの兄に向けるアンソニー(3枚目の写真)。「降ろすんだ、クソガキ!」「弾が入ってる!」「何を オモチャにしてるか 知らないだろ!」「俺を 狙うな!」「やめろ、正気か!」「下げろ、クソ野郎」。と必死に逃げまどう兄を、執拗に狙うアンソニー。そこに、叫び声を聞いてヴォーンがやって来る。ヴォーンは、まず兄を、「何度言ったら分かる。銃は遊ぶためじゃない。大きくなるまで、取り上げちまうぞ」と叱った後で、アンソニーに「大丈夫か 兵隊君。なぜ、銃を向けたんだ?」。「ニセモノだと思ったんだ。ただの遊びだと」(4枚目の写真)。4つ目の嘘
  
  
  
  

2人が一旦家に戻ると、ドアには南京錠がかけられ、真ん中に1枚の紙が貼ってある。「退去通告」だ。家賃未払いのため、大家が非常手段に出たのだ。退去通告を心配そうに見るアンソニー(1枚目の写真)。父のためだけではない、自分が泊まる場所もなくなったのだ。裏口に回るがやっぱり同じ。仕方なく、壁の小さな窓を開け、「入れるな」とアンソニーを促す。「やりたくない」。「楽しいぞ。ほら、持ち上げてやる」と上半身を押し込む(2枚目の写真)。見た目より、そこからが大変だった。「痛かったら、言うんだぞ」と言われ、思わず「痛いよ」(3枚目の写真)。「ほとんど入ったぞ」と言いつつ、隙間に足を突っ込む父(4枚目の写真)。「入ったぞ!」の声で、確かに中には入ったが、支えがないので、そのまま床に転がり落ちるアンソニー(5枚目の写真)。「大丈夫か?」。「うん、何とか」〔結構、危険だった〕。父は、「寝室のドレッサーの上にビンがある。それを取って、窓まで持って来るんだ」と頼む。ビンにはコインが一杯貯め込んであり、当座の資金としてどうしても必要なのだ。ビンを見つけたアンソニーに追加注文の声がかかる。「クローゼットの中にボトルがある」。「分かった」と言ってクローゼットを開けるが、そこにあったのは ウィスキーのボトル。「見つからない」と、5つ目の、いい嘘をつくアンソニー(6枚目の写真)。「ちゃんとある。よく探せ」。アンソニーは棚の横に置いてあった収納ボックスの中にボトルを隠し、「クローゼットには ないよ」。これなら、嘘ではない。父は、コインのビンと、アンソニーの荷物と、自分の下着を持って来させる。アンソニーがどうやって外へ出たかは映像化されていないが、もし、同じ窓を通って出たとしたら、至難の難行だったであろう。
  
  
  
  
  
  

「パパの家なのに、なぜ締め出すの?」。「家主がいるんだ。ちょっぴり借りがあってな。嫌な奴なんだ」。「で、どこに泊まるの?」。「家に泊まるしかないな」。「僕の家?」。「前は、俺の家だったんだ。俺が一から 建て直した。ママには内緒だぞ。戻る前に 退散しないと。新聞配達も しなきゃいかんだろ」。アンソニーは、早朝、新聞配達のアルバイトを社会勉強でしていて、それをするためには、新聞が届けられた時、家にいないといけない。それを考えると、どの途、父の家で寝ることはできないのだ。2人は、父の車でアンソニーの家に行こうとするが、エンストで動かない。「ママとカイルは、まだワゴン持ってたか?」。これは、古い2台目の車のこと。「うん。でも、調子が悪いって」。「どこが?」。「覚えてない」。「走るんだろ?」。「そう思うよ」。かくして、拠点を息子の家に移し、移動のための車は元妻の車を使うことにする。小銭だけでも持っていこうと、車の小銭入れを見ると、ほとんど残っていない。不審に思い息子を疑いの目で見る父と、知らぬ顔を決め込むアンソニーの対比が面白い(1枚目の写真)。2人は歩いてアンソニーの家に向かう。途中、スーパーに立ち寄ると、父は、持って来たビンの中身を、コインスター(Coinstar)に全部投入する。コインスターは、コインを紙幣に替える機械で、手数料は10.9%。結構高い。その店で使える券に替える場合は手数料ゼロ。寄付する場合もゼロだ。決定ボタンを押す時、「やっていい?」と頼むアンソニー。「急げよ。やることが 一杯ある」と言って、息子の体を持ち上げる。アンソニーが押したのは、「charity(寄付)」のボタン。その瞬間の、驚いた父の顔(2枚目の写真)。せっかくの残り少ない現金がパーとなり、「寄付のボタンを押したな」と責める父に、アンソニーは「教義問答書では、そうしろって」とケロリと答える(3枚目の写真)。このあたりの掛け合いは、とても面白い。
  
  
  

なんとか家に着いた2人。「黄色だと? 嘘だろ」。家の外壁のペンキの色が変わっていたのだ。この言葉で、父が長らくこの家を訪れなかったことが分かる。家の中に入ると、居間に作った棚がない。「俺が造った棚は どうなった?」。「カイルが気に入らないからって、外したよ」。「気に入らない?」。「作り付けの木の棚が 嫌いな奴がいるのか?」。この言葉で、父がかなりマニアックで、好みを一方的に押し付けるタイプだと分かる。次に、居間からキッチンに行くドア・トリムを見て、「ここは どうしたんだ?」と批判。それを聞くアンソニーの超然と顔が、如何にもジェイデンらしい(1枚目の写真)。ドア・トリムに不整合ができている。完璧主義の内装仕上げの専門家としては許せないのだ。「カイルが、ぶつかって」。「ドアトリムにぶつかった? どうやったら、そんなことが?」。そして、「なぜ、直してない?」。「やったよ。かえって悪くなった」。「ペリシテ人と住んでるんだな」。「ペリシテ人て?」〔ペリシテ人は、芸術や文学などに関心のない無趣味な人を揶揄する表現〕。「どあほの生きザマだ」。他にも、自慢のキッチン収納に傷が付き、思い切り引っ張らないと開かないドアもある。カイルの作業場を見て、軽蔑の言葉を並べる父。そんな父の言葉を無表情に見返すアンソニー(2枚目の写真)。この無表情がジェイデンの最大の魅力だ。この場合は、「酔っ払いで職もないのに、そして、家まで追い出されたのに、悪くない人を批判ばかりして」という軽蔑の情を、親切心から隠して無表情になっているのだ。だから、この直後に「カイルが好きか?」と訊かれると、「うん、いい人だよ」と、これも無表情に答える。アンソニーが、ママの車のキーを探し出し、いざ2人で出発。本当なら、これから先は何が起きるか分からないので、アンソニーを自宅に置いておくのがベストだと思うが、それでは映画にならない。
  
  

エンジンは順調にかかり、2人は母の車で出発する。しかし、一旦停止の場所にさしかかった時、ブレーキを踏むが、車は止まらない。危うく、事故になりかけたが、何とか衝突は避けられた。その時、アンソニーが、「そうだ、これが問題だった。忘れてたよ。ママが、ブレーキが利かないとか言ってた」と話す。ブレーキが利かない状態で運転はできない。最寄の修理工場までハザードランプを点滅させて、路肩をノロノロと進む。ブレーキパッドを購入するが、商品に75ドル、取り付けに275ドルと言われ(1枚目の写真)、「自分でやるよ。道具を貸してもらえるか?」。親切な店主は道具をタダで貸してくれ、暗くなると照明も貸してくれた(2枚目の写真)。思ったより手間取り、ブレーキパッドの交換が済むまで待って、ようやく店を閉めることができた〔すごい迷惑。プラス、親切な店主〕。「よくなったろ?」。「うん。止まるもんね」。「遅くなったから、ドレイクって奴には明日会うことにしよう」。
  
  

アンソニーの家に戻った2人。多分、アンソニーが作ったんであろう。仲よくパンケーキを食べている(1枚目の写真)。父:「パンケーキか。最高の選択だ。ママが心配してたからな」。食後は、アンソニーの主導でトランプゲーム「ゴーフィッシュ」を楽しむ(2枚目の写真)。それが終わるとTVゲーム(3枚目の写真)。2人の前のローテーブルに顔が映っていることで、鏡面仕上げされていることが分かる。最後は、ボクシングの練習。「ジャブは、真っ直ぐな」。ついついアンソニーが腕を振り回しかけると、「回しちゃダメだ。手を顔まで上げる」と教える(4枚目の写真)。最後のシーンは、『ヴィンセントが教えてくれたこと』で、ベトナムで鍛えたヴィンセントが、へなへなボクシングを鍛えるシーンへのオマージュか。
  
  
  
  

夜が更けるにつれ、だんだんと父の様子がおかしくなっていく。TVを見ていても、画面など見ず、自分の顔を触っている。そのうちに、立ち上がるとキッチンにずかずかと入って行き、「ワイン・クーラーだと? マジで? 最高に女々しいな」と不平を言う。そして、文句を言いながらも、小さなビンを手に取る。すかさずアンソニーが、「飲まないで。僕が飲んだと思われる」と止める。これ以上に有効な止め方はない。「ミネラル・ウォーターがあるよ」と声をかけるアンソニー。「お前は ここにいろ。何かないか、ガレージを見てくる」と出て行く父。一旦は、本を開いたところでハタと気付き(1枚目の写真)、父の服から車のキーを出して、ソファーのクッションの間に隠す。ガレージにない場合、車で買いに出かける可能性があるからだ。父が手ぶらで戻って来る。アンソニー:「見つかった?」。父:「何が?」。「さあ」。「ない」。父も、酒を捜してるは言えない。「俺は… ちょっと外出してくる。心配するな」。しかし、キーがない。「キーは どこだ?」。「知らない」。ここでも、善意の嘘。「誰か 呼ぼうか?」と心配するアンソニー。「いいから、寝て来い」。「ここで 一緒にいたい」(2枚目の写真)。父は、「俺は大丈夫だ。行け。寝て来い。今すぐ」と邪険に追い払う。寝室に行ったアンソニーは、跪いて「パパを助けて下さい。どこか、悪いんです。きっと、ご存知でしょ。治してあげて下さい。アーメン」と神に祈る(3枚目の写真)。
  
  
  

一旦は眠ったが、アンソニーは、父の叫び声で目が覚める。見に行くと、父の独り言が聞こえる。2階まで届くのだから、相当な大声だ。「言ってくれなかったら、どうして分かる?」「そのことなら、前に話し合っただろ」「全部 俺のせいにするな」「なあ、俺が悪かった。俺は どうしたらいい?」…。以前に、元妻とやりあった口論の再現だ。アンソニーが、「何してるの?」「パパ?」と訊いても返事がない。完全に自分の世界に入り込んでいる。仕方なく、唯一の手段として、父の友人で、今日も会ったオットーに電話をかける。「オットー! アンソニーだよ。パパが変なんだ」「酔ってるみたい」「ここにいない人と 話してる」と状況を説明。親切なオットーが見に来てくれることになり、「僕たち、ママの家にいる」と告げ、「数分で行く」と言われホッとする(1枚目の写真)。その時、父の様子が変わり、「行かないと」と言い、玄関から外に出ようとする。「出てかないで」と必死に止めるアンソニー(2枚目の写真)。「パパ、オットーが来るよ。数分で ここに着く。ここに いてくれって」。そこに、オットーが到着。オットーは父を優しく宥め、「寝る時間だ。そうだろ? 助けてやる。そうだ。行こうな」と巧みに寝室へと連れて行く。2人を見送るアンソニーの目には涙が(3枚目の写真)。しばらくして、オットーが戻ってくる。「パパは、酔ったんじゃない。禁断症状なんだ。何か 分かるか?」。「ううん」。「変なことを言ってたのは、酔ったからじゃない。飲んでないから、変だったんだ。分かるか?」。「ううん」。「時々、大人が 飲むのをやめると、やめたことで頭がおかしくなるんだ。君の母さんは、飲むのを止めなければ、もう君とは会わせないと言った。彼は、居酒屋にいたが、飲んだのはルートビアだけだ。頑張ってるんだ。君のパパは、いい人間だ」と、アンソニーにも分かるように説明する。そして、「わしは家に戻るが、用があれば電話をくれ。すぐに駆けつける。いいな? パートナー」と言って、アンソニーと握手をして別れる(4枚目の写真)。
  
  
  
  

翌早朝、目覚ましで起きたアンソニー。さっそく、配達する新聞を畳んではポリ袋に詰める作業を始める。同じように目を覚ました父も、息子の作業を見ていて(1枚目の写真)、無言で手伝い始める。そして、まだ暗い町に 配達に出て行く2人。アメリカらしく、道路を歩きながらそのまま放り投げる(2枚目の写真)。以前、何度も見たのと違い、袋に入っているだけマシだ。配りながら、父は、管理の行き届いていない家を見て、「トイが壊れて、ペンキが剥げてる。ゴミも捨ててない」「ちゃんと修理しないと。掃除もな」「最初に ここに来た時、住民は誇りを持ってた。どうなっちまったんだろう?」と意見する。「わかんない」。「すべてが 悪い方に進んでる。道徳感の欠如だな。お前の世代で、もう一度 元に戻さんといかん。お前次第だ」。「分かった」。「そうか? こんな風にしちまった俺達が 悪いんだがな」。「気にしないで」。「いやいや、するとも。俺たちの両親は 偉大な国を造った。それを守ることすら できなかった。済まんな」。これは、父個人のことを言っているのか、アメリカという国を指しているのか? そう言えば、2016年の大統領選で、「We will make America great again(アメリカを再び偉大な国に)」と叫んでいた候補がいた。新聞の配達を終えて、「昨夜のことは、あまり覚えてない。お前を傷付けたか?」と訊く父。「ううん」。アンソニーの次の言葉は、それとは全く関係のないものだった。「パパ?」。「何だ?」。「僕、聖体拝領したくない」(3枚目の写真)。さらに、その後、「なぜ、教会に行かなくなったの?」とも訊く。「十分、行ったからさ」。「地獄に行って欲しくない」。これを受けて、父は、「いいか、これだけは話しておきたい。ママには言うんじゃないぞ。彼らがお前に言うことは、事実かもしれんが、間違ってるかもしれん。俺には分からんし、彼らも分かってない。彼らが何て言おうともだ。何も知っちゃいない」と話す〔「彼ら」とは神父のこと〕。そして、「だから、念のため、聖体拝領は受けた方がいい」と、最初のアンソニーの発言に対し、変な論理でNOと答える。「堅信式は?」(4枚目の写真)。「害はない。なら、やればいい。ママのためにな。だが、大人になったら、好きなようにすればいい」。「できるの?」。「もちろんだ。教会に行かなくてもいい」。ここで、アンソニーの前の質問にも答えている。最後は、「自分自身で決めるんだ。正しいと思うことをするんだ。いいな?」で締めくくる。少し、くどい。
  
  
  
  

翌朝、父は、元妻との約束通り、アンソニーを教会まで送って来た。そして、「お前が教会にいる間に、俺はドレイクの奴に会いに行く。もし遅くなっても、この場所で待ってるんだ」と言うが、アンソニーは、「僕、教会には行きたくない」と言い出す。「行くべきなんだろ?」。「自分で決めていい、って言ったじゃない」。「大人になってからの話だ」。「考えろって言ったよ。だから、考えたんだ」(1枚目の写真)。「ママに、教会に行かせるって、約束したんだ」。「連れてったと、話すよ(I'll tell her you took me)」。確かに教会の前まではtakeしたので、嘘ではない。結局、「一緒じゃなきゃ、教会へは行かない」(2枚目の写真)の宣言で、一件落着、2人でドレイクのキャンピングカーに向かうことになった。昨日、ヴォーンから電話を受けていたドレイクは、「やるよ。調べてやる。これが 俺の仕事だ」とやる気満々だ。アンソニーが「探偵なの?」と訊くと、「左官屋だ」(3枚目の写真)。そして、父に「昨夜、5人のリストを作った」と話す。「一緒に 来てくれるか?」との依頼には、「ヴォーンの友達の助けになるのは光栄だ。彼には恩義がある」とえらく前向き。さっそく、リストの1番に向かって出発する。
  
  
  

車の中で、「どこからヒントをつかんだ?」との父の問いに、ドレイクは、「この町の商店の半分と 知り合いでな。泥棒は 全員知ってる」と自信に満ちた口調で答える。リストの最初の男は、結構上等の住宅地に住んでいる黒人で、ちょうど車で家族と一緒に帰って来たところだった。ドレイクは、降りる直前、「俺が話すからな。INXS(インエクセス)の『Listen Like Thieves(泥棒のように耳をすませ)』と同じ。それが お前さんの役目」。そう言っていたくせに、いざ降りて、黒人に「やあ、どうしました?」と訊かれると、父に向かって「前に出て、ずばり訊くんだ」と指図する始末(1枚目の写真)。そこで、慣れない父が、「誰かが俺の道具箱を盗んだ。で、誰かが言ったんだ。あんたが 何か知っるかもと」と言いにくそうに訊く。「私が盗んだとでも 言いたいのか?」。「違う」。そこに、ドレイクが割り込む。「違わない。ウォルター。ごまかされるな。違うなら、証拠を見せて欲しい」。黒人は、「あんたら幸運だったな。普通なら、叩き出してやるところだ。だが、今は気分がいい。1週間キャンプしてきて、今 戻ったんだ」。父が、「ドレイク、話せるか?」と2人で話し合っている間、黒人の家の方を見ているアンソニー(2枚目の写真)。ガレージには、キャンプに持って言ったモーターボートまで置いてある。相談した2人は、結局、この黒人ではないとし、父は、「謝るよ。良い一日を」と謝罪する。黒人は、「俺はボーイングの技術者だ。どこで、お前さんのレーダーにかかったんだ?」と飛行機関係者らしい質問をする。父は、ひたすら、「俺の間違いだ。煩わせて申し訳なかった」と平謝り(3枚目の写真)。相手の方が遥かに裕福で、職業も立派、ケチな盗みなどするハズもない。如何にドレイクのリストがいい加減かを示している。車に戻り、ドレイクは、「あいつの名前を教えた奴を 信じるべきじゃなかった。奴はバカだ」。そして、「リストの他の奴は、みんな知ってる。全員が建築業だ。道具を知ってる。じゃあ、次は こいつだ」と言うが、父は、「やめた方が いいんじゃないか」と消極的。ドレイクは、くだくだ弁解したが、父は、「家まで送るよ、ドレイク。力添えに感謝する」と送っていく。
  
  
  

終点に近づいた時、ドレイクが急に、「リストにある奴だ。奴のことは ずっと知ってる。降ろしてくれ」と言い出す。ドレイクの姿を見て逃げ出す男。すれを見て、有望だと思った父も、車から出て後に続く。ドレイクは、男を 停めてあった車のフロントグラスに押し付けると、「お前が知ってるって、知ってるぞ。お前がやったんじゃなくても、話した方がいい。フレディ、ボコボコにしてやろうか」と脅す。「何も知らねぇよ」と否定する男(1枚目の写真)。「どうなるか、分かってるんだろうな」の言葉に、「チューリンガー兄弟、知ってるだろ? 奴らが盗んだ」。「どうしてか知ってるか?」。「聞いただけだ」。「誰から?」。「言えねぇ、だが確かだ」。この結果を受けて、3人は、チューリンガー兄弟の家に向かう。父が、最初に懲りたので、「向こうに着いたら、俺が話すのか?」と確かめる。「いいや、ウォルト、俺が話す」。「だけど、最初の奴の時…」。「済まん。うろたえたんだ。知ってる奴だと思ってたら、全然違ってたから」と弁解。「こいつは、俺がやる」。そして、いよいよ兄弟の家へ。父は、アンソニーに、車にいるようきつく言い渡し、ドレイクと2人で兄弟の前に進み出る。ドレイクが「彼の道具箱が盗まれた」と話し始めると(2枚目の写真)、兄は弟に笑いかけ、「何だと?」と訊き直す。「俺達は証拠を握ってる。お前たちが道具箱を盗んだって。白状しな」。父も、「面倒は起こしたくない。道具箱が要るんだ」。兄は、そんな話にお構いなく、バカにしたように、「おい、ドレイク、またヒロポンやったのか?」と尋ねる。この時には、禁制を破ってアンソニーが様子を見に来ていた。ドレイクは自己弁護で、父に向かって「目撃者から聞いたろ」と言うが、父は、「目撃者じゃない」と間違いを指摘する。2人がもめているうちに、気の短い弟が拳銃を出してきて、「もう うんざりだ」とドレイクに向ける。その時、アンソニーの携帯が鳴り出す。「やあ、ママ」「うん、すべて順調だよ」「うん、ぜんぜん。ホントだよ」「うん、新聞を配って、教会に行ったよ(went to church)」「いいよ。パパに伝えとく」「分かった。うん僕も。バイ」(3枚目の写真)。2つ嘘が入っている〔教会はgoしたので、嘘ではない〕。この電話の間、弟が銃を下げて、一種の休戦状態になった状況はコミカルで面白い。電話が終わり再び銃を向けた弟だが、兄に「こいつが困ってるのが 見えんのか?」(4枚目の写真)と説得されて銃を下す〔こいつとは、父のこと〕。父は、ドレイクに「もうヤメだ」と突き放す。父は兄と2人だけになり〔アンソニーも聞いているが〕、「ドレークのこと知らなくて… 麻薬の常習者には見えなかった」と謝る。「そうなんだ。ドレイクはいい奴だが、時々、おかしくなっちまうんだ」(5枚目の写真)。この後、父は、ドレイクをキャンピング・カーまで送り届けてやる。その間も、ドレイクの口は減らず、悪びれもせず、最後に駄賃まで請求する。厄介者に振り回された数時間だった。
  
  
  
  
  

意気消沈し、家に戻る前に、途中で見つけた自分の「作品」を、息子に見せてやろうとする父。「お前に 見せておきたい」と言って、アンソニーが、「入っていいの?」と心配するにも構わず、「構わん。俺を知ってる」と言って、他人の家の庭に勝手に入って行く。そして、かつて自分が造ったトレリスを、自慢げにアンソニーに見せる(1枚目の写真)。「とってもきれいだね、パパ」と感心する〔もしくは、フリをする〕アンソニー。その時、2人の背後に家主の女性が現れ、いきなり、「警察を 呼んだわよ」と言い(2枚目の写真)、「犬を けしかけるわよ」と脅す。早々に逃げ出す2人。車に乗りながら、「トラブルにならない?」と心配するアンソニー。「心配するな」。しかし、杞憂はすぐに現実となった。父の車をパトカーが停めたのだ。目的は、私有地内への無許可侵入に対する厳重注意。免許証と登録証の提示を求められ、免許証は持ってないと言い、名前は、登録証から、「カイル・ゼブラーさん?」と訊かれ、「ええ、カイル・ゼブラーです。こっちは、息子… 継子」と嘘を付く。本当のことを言えば、車の盗難事件にも発展しかねない。女性警官が、アンソニーに「あなたの継父さん?」と訊き、アンソニーは肯定して、嘘の数を増やす(3枚目の写真)。父は、結局、免許不携帯のキップを切られただけで済んだ。父は、息子に、「あの奥さんは、俺が分からんかった。1週間も働いたのに、覚えてなかった」と弁解する。アンソニーは、「ペリシテ人なんだ」と慰める。「本棚も 好きだったよ。カイルは嫌いだったけど」。いい子だ。しかし、原因は、思い上がった父にある。たかが、内装仕上げの専門家、芸術家でもないのに、誰が顔を覚えているだろうか。万一覚えているにせよ、庭に入る前に、予め家主に一言頼めば、誰もNOとは言わないし、トラブルにもならなかったろう。
  
  
  

家に戻った2人。「これから、どうするの?」とアンソニーに訊かれ、「宿題でも やるか?」と言う。机に向かった息子に寄っていき、通知表を見る父。オールAだ。驚く父に見せたアンソニーの顔が面白い(1枚目の写真)。自慢というよりは、当然という表情だ。彼がインテリ用のビル・ナイの著作を平気で呼んでいたのも、秀才だからだ。父は、宿題を命じたことなどすぐに忘れ、家の中の造作不良箇所の修理を2人でやろうと思い立つ。最初は、キッチンの入口のトリム。「修理、手伝いたいか?」。「いいよ」。そして、亀裂を直した後、表面をきれいに仕上げるため、「ここに 少しパテを塗る」と息子に教え(2枚目の写真)、実際に指で塗らせる。仕上げ職人のコツを細々と話し、最後に、「下手な仕上げは罪悪だ。最近は、質の高い仕事が評価されなくなってきた。でも、今は気付いたから、ちゃんと考えれるだろ?」。「たぶん」。さらに、「イスを見てみろ。誰かが造った。1人じゃない。みんなが手伝った。忘れるなよ」。「橋を渡る時には、どんな風に造られたか考えてみるんだ」。「分かった」。すごく気のないアンソニーの表情(3枚目の写真)。このシーン自体も長すぎる。
  
  
  

アンソニーは、巧みに話題を変え、「次は、アレンを呼んでいい?」と訊く。「アレンって?」。「パパの友達の家にいた子」。「友達の家?」。「昨日の」。「ヴォーンのことか? 奴は 友達じゃない。ほとんど知らない。誰が道具を盗んだか、知ってるか訊いただけだ」。「居酒屋で 会ってたんだと思ってた」。これは重要な一言だ。「何のことだ?」。「僕が、シグナルの中に入った時、彼が出てきた」。急に真剣になり、「同じ奴だと 確信があるのか?」と質す父(1枚目の写真)。「うん。アランがトラックにいた」(2枚目の写真)。「なぜ 話さなかった?」。「会ってたと思ったから」。父は、「二度と行かんと言ってたな。そして、役立たずのドレークを紹介した。いっぱい食わされたんだ」と事実に突き当たる。「彼が道具を盗んだの?」と訊くアンソニーに、父は、「コートを取って来い」と命じ、直ちにヴォーンの家に向かう。
  
  

家に着くなり、アランに「パパは どこだ?」と詰め寄る父。父が中に飛び込んで行って、2人だけになると、アンソニーは、アランが持っていたグラブを取り上げて、それで背中を叩き、イスに押し倒して「君のパパ、道具をどうしたんだ?」と激しく問い詰める。アランは、「パパがやったんじゃない。ロジャーだ」と打ち明ける(1枚目の写真)。「ロジャーって?」。「パパと一緒にいた奴」。確かに、アンソニーが飲み屋に入ろうとしてヴォーンにぶつかった際、一緒に、白いジャンパーの男がいた〔以前の写真、参照〕。「どうして 言わなかった?」。「言いたかったけど、パパに殺されるから」。その時、家の中から、ヴォーンの悲鳴が聞こえて来る。父が、ヴォーンに馬乗りになり、「どこにやった、このクソ野郎」と訊いている。「言ったろ、知らないって」。そこに入って行ったアンソニー、秀才ならではの作戦に出る。「パパ、彼には こう言わないと…」。「何だ?」。「ロジャーが言ったことを、言うぞって」(2枚目の写真)。「ロジャーが言ったこと?」。「うん。ロジャーは、『ヴォーンが道具を盗んだ』って言ったんだ」。事実と正反対の言葉だ。それを聞いたヴォーンは、「何だと?! そんなのは、めちゃくちゃな嘘だ!」(3枚目の写真)。そして、「ロジャーが、道具箱を盗んだ本人だ」とつい言ってしまう。後でアランが叱られないよう、ヴォーン自らに白状させたのだ。賢い作戦だ。父:「なんで 信じると思う?」。父親が先にバラしたので、安心したアランが、「ホントだよ。ロジャーが あんたのトラックに行って、盗った。パパは、やめろと言ったんだ」と話す。「その子を 信じるか?」との父の問いに、頷くアンソニー。かくして父子は、真犯人の家に直行する。
  
  
  

ロジャーの家に乗り入ると、父は、そこにいた男に「ロジャーか?」と言葉をぶつけ、「道具箱を返せ」と迫る。そして、逃げようとするロジャーに飛び掛かる。組み敷かれたロジャーは、「済まない、ホントに悪かった」と謝る(1枚目の写真)。「謝罪はいい、道具箱を返せ」。「持ってない。ポーンショップ(中古買取・販売店)で売った」。「ポーンショップは もう調べた」。「レントンにある ピートの店に持ってった。そこなら 行かないと思って」。「金を寄こせ」。「持ってない」。「幾らもらった?」。「200ドル。でも、もう使った。200ドル必要だった。6ヶ月 働いてない。子供が3人いて、食べ物がなかった」。こうなると、もう どうしようもない。そこにロジャーの妻も出てくる。「両親と住むため、アイダホに戻るの。自立できるようになったら、お金を送るわ」。「今、必要なんだ」。「それは無理ね。彼が あなたの道具を盗んだ。悪いことよ。でも、全然お金がないの。周りを見て。売れるものが一つでもある? 残ったのは、草刈り機だけ。しかも、動かない」。しかし、車庫にはE90型のカローラがあるので、旧型だが200ドルにはなるかもしれない。泥棒でいるよりは、アイダホに戻るのを諦めてでも売って返金するのが筋ではないかと思うのだが… この論理はアメリカでは通らないらしく、しかも、警察に届けることもせず、父は「行くぞ、アンソニー」といって、ロジャーの家を去る(1枚目の写真)。「ごめんなさい。住所を書いてよ、お金を送るから」の声にも、「もういい」。住所くらい知らせておくべきだろう。その方が、盗人の更正にも役立つし、父にとって将来の家賃の助けにもなるので。これは、ただの脚本上の演出。わざとらしい。
  
  

次に2人が向かったのが、ポーンショップ。アンソニーが「一緒に行く」と言うのを「ダメだ」と止めるが、それにお構いなくアンソニーは降りる。車を降りた所で向かい合う2人。しかし、アンソニーが全く折れないので、父も諦めて2人で店に入る。父は店主を呼び、展示してある道具箱を指して、「あれは 俺の道具箱だ。盗まれた」と言う(1枚目の写真)。「領収書はあるか?」。「すごく古い。父のだった。領収書などない」。「それは、あんたの問題だ」。「開けなくても、中味を全部言えるぞ」。「みんな、そう言って、自分のだと主張する」。「俺の道具箱だ」。「警察か弁護士を呼べよ」。「買う前は知らなかったとしても、今は知ったんだ。あれは盗難品だ」。「官憲を呼べよ。そしたら調べる。それが、この国のやり方だ」。「幾ら払ったんだ?」。「400ドル」。買値を倍額で嘘をついたのは店主が悪いが、言い分自体はもっともだ。それなのに、警察を呼ぼうとしない父の態度も不自然だ。①警察を呼んでも、今日中に手に入らない、②ロジャーが逮捕される、の2点を考慮したのかもしれないが、所持金がゼロに近いのに買値を訊くのは変だ。父と店主が話しているうちに、アンソニーは道具箱を手に取ると、抱えて店の外に持ち出す。アンソニーとしては、父を助けるつもりで盗んだのだろが、肝心の父の対応はちぐはぐ。アンソニーに「走れ」と言って店主を阻止するということは盗難を幇助することになるが、それなら、一緒に逃げて、重い道具箱を受け取り、2人で逃げれば盗難は成功していたかもしれない。しかし、店内で追跡を阻止したために、巨体の店員が出てきて、父は殴られ逃げられなくなる。そのため、重い箱を必死で持って逃げていたアンソニー(2枚目の写真)も、戻らざるを得なくなる。父を助けようと「パパを放せ、くそったれ!」と巨漢に殴りかかるが(3枚目の写真)、簡単にいなされてしまう。結局、「二度とここへ来るな。この道具箱は、絶対に売らんからな」と宣言されて終わる。父は、「ケガはないか?」とアンソニーを心配するが(4枚目の写真)、逆に「血が出てるよ」と指摘される始末。そして、アンソニーに抱きかかえられながら、車まで辿り着く。先ほどのロジャー、そしてこのポーンショップでの、曖昧な父の態度が、この映画の評価を下げている最大の理由だと思う。
  
  
  
  

すべての望みを断たれて家に戻る途中、「リキュール、ビール、ワイン」と書かれた店の前で、父が車を停める。そして、「飲み物を売ってる。何か欲しいか?」とアンソニーに尋ねる。アンソニーは、父が入って行きたがってると思い、「ううん、要らない」と冷たく答える(1枚目の写真)。しかし、父も「俺もだ」と言って車を出すと、口元が緩む(2枚目の写真)。短いシーンだが、アンソニーが、酒を断とうとしている父の努力を初めて評価した一瞬だ。
  
  

2人は家に戻り、父が夜を過ごした痕跡を可能な限り消し、車を戻し、家に鍵をかけ、家の近くで母とカイルの帰宅を待つ。そして、母とカイルが家に入ると、すぐに一緒に家に行き、まず、アンソニーが「戻ったよ」と母に声をかける。「ぴったりね。私たち、今、戻ったのよ」。そして、「どうだった?」と訊かれ、「いいよ。ええと、パパもいる」(1枚目の写真)。母が、2人に向かって、「で、順調だった?」と改めて訊く。父。「ああ。そう思わんか、アンソニー?」。「良かったよ。何も なかった」。堂々とした嘘。「週末は、2人で何してたの?」。「ブラブラしたり、パパの家でビデオ・ゲームしたり」。嘘2つ。ビデオ・ゲームをしたのは、自分の家だ。「ちゃんと食べた?」。「うん、食べたよ」。これも嘘。母がスナックを取りに行っている間に、カイルが父に「今、困った状況なんだって?」と尋ねる。「もし、金か何か必要なものがあれば、遠慮なく言ってくれ」。しかし、父は、「ご親切にありがとう、だが、問題ないよ」と断る(2枚目の写真)。それを横で聞いていて、何とかしなくちゃと思うアンソニー。一方、母は、家の変化にすぐに気付き、カイルがいなくなった隙に、「ウォルト、外で話せる?」と、父を家の外に呼び出し、問い詰める。「週末、私の家で 何してたの?」。「新聞配達に アンソニーを連れて来た時、トイレを借りたんだ」。「トイレに行く時、いつもドアのトリムを修理するの?」。「いつもじゃない。悪かった。不味い仕事を見ると、つい我慢できなくて」。「そう。それと、お腹が空いてたからパンケーキを作ったのね?」。こうしたやりとりを、窓辺で盗み聞きしているアンソニー(3枚目の写真)。
  
  
  

アンソニーは一大決心をし、母のベッド脇の小物入れから現金を取り出す。ちょうどその現場を母に見つかってしまう(1枚目の写真)。母は、アンソニーをベッドに越し掛けさせ、「何のお金なの?」と尋ねる。「パパに」とだけ答えるアンソニー。「どうして?」。「言いたくない」。「週末 ずっとここにいたんでしょ? 何が起きたか、全部知ってるんだから」。ここからが、アンソニーの手腕。「だから、パパにお金をあげたいんだ」(2枚目の写真)。「車のためだよ」。「車って?」。「ブレーキの修理代」。「週末に、あなたのパパが、私の車を使ったの?」。「知ってたかと」(これも嘘)。「ブレーキ代は幾ら?」。「75ドル。それに作業代」。「325ドルが作業代?」。「そう」〔実際は275ドルだが、道具箱が400ドルなので、それに合わせて増額した。だから、ここも嘘〕。「適正な価格。そうなんでしょ?」。「そう思うよ」。「他に 打ち明けることはある?」。「ううん、そんなとこ。かなり退屈だった」。母の前では嘘の連続だが、これはすべて父のため。最後に、「パパ、もう数日 車借りていい? トラックが 直るまで」とダメ押しする。母も、息子の方針に協力し、カイルに、①元夫に自分のワゴンを数日貸すこと、②その際、ブレーキを付け替えてもらうこと、の2点を頼んで了解を得る。逆に、手間をかけるので、カイルからは「構わないのか?」と心配される。事情の分からない父は困惑しながら、「喜んで」〔ブレーキは交換済みだ〕。キーを渡され、「じゃあ、失礼するよ」と父が席を立とうとすると、アンソニーが、さらに、「覚えてるよね、僕を 家に連れてくって言ったこと。忘れたものがあるから」と、仕掛ける(3枚目の写真)。忘れたものなどないので、これは、強制的に自分を父と一緒に行かせるための見事な策略だ。
  
  
  

車に戻り、「いったい どうなってる?」と息子に尋ねる父。アンソニーは、「これで、道具箱を買い戻せるよ」と400ドルを渡す(1枚目の写真)。「お金 どうしたんだ?」。「ママから」。「返してこないと」。「それ、車の修理代。もう 説明は終わってる。さっき、ママが言ったよね… 車を修理して欲しいって」。息子の手回しの良さに感心しながら、さっそく、オットーに電話をかける父。自分が行っても売ってくれないので、代わりに買ってもらおうというわけだ。しかし、オットーは不在、そこで、アンソニーが、「任せて、あっちへ行って」と指をさす。向かった先はアレンの家。アンソニーはアレンを呼んで来ると、父に、「彼に お金渡して」と言う。アレンに道具箱を買ってきてもらおうというのだ。父は、店に入る前に、道具箱の形と場所を教え、「パパの誕生日に、とだけ言うんだ」と指示。しかし、店から道具箱を持って出てきたアレンは走っている。アンソニーより大きいので足が速い。ドアが開き、店主が「くそ! お前だったのか!」と怒鳴る(2枚目の写真)。ボヤっとしていた父は、店主と巨漢が追いかけてきたので、慌てて車を発進させる。安全な場所まで逃げたところで停車。アレンがお金を返す。道具箱は盗んできたのだ。アレンは、「中に入ったら、彼、お客と話してた。だから、箱のトコまで行って、取ると、走ったんだ」と顛末を話す。箱を開けると、中は元のままだった。「どうもありがとう」とアレンに感謝する父。それを見て、心から嬉しそうな顔をするアンソニー(3枚目の写真)。
  
  
  

父は、アレンを家まで送ると、「もう一ヶ所 行かないと」と言い、元妻との約束通り、アンソニーを、日曜日中に教会に行かせる。そこで、告解室に入ったアンソニー、「お許し下さい。僕は罪を犯しました」と再び「神父様」を付け忘れる。「前回の懺悔から1日経ちました。ママとパパに 嘘をつきました。盗みました。欲望を持ちました。悪い言葉を使いました。日曜のミサに行きませんでした。女性警官に嘘をついたり、マイクに銃を向けるべきじゃ ありませんでした。ええと… 他には…」と次から次に、伏し目がちに並べる(1枚目の写真)。昨日とは100%違う「如何にも悪タレ」的な内容に、驚いた神父の顔が面白い(2枚目の写真)。
  
  

母の家まで戻って来た2人。車にもたれながら、父が、「次の週末は 何がしたい?」と訊く。以前と違い、父もアンソニーが大好きになっていて、毎週会いたいと思うようになったのだ。「次の週末は、初聖体拝領と堅信だよ」。「そうだったな。やれるか?」。「うん。ママのために。来てくれる?」。「ああ。行くとも。必ず」。次の話題は、「どこに住むの?」。「多分、オットーが数日 泊めてくれる。週末には手間賃がもらえるから、そしたら家を取り戻せる」。「良かったね、パパ」。400ドルはどうなったのか? この後で、アンソニーが初めて自分の殻を破る。「パパが 正しかった。僕が悪いんだ」。「何の話だ?」。「僕がトラックを離れた」。「違うぞ、アンソニー。悪いのは俺だ。鍵をかけ忘れた。俺のせいだ。お前のパパのヘマだ」。それでも涙ぐむアンソニー(1枚目の写真)。しかし、多分、原因は、父の鍵をかけ忘れだろう。盗んだのがプロではなく、とっぽいロジャーだったことを思うと、南京錠を簡単に外せるとは思えないからだ。父は、「お前は いい子だ。たいしたもんだ。道具箱を取り戻したんだ」と鼓舞する。「で… 次の週末 会える?」と確認するアンソニーに、「次の週末、会おうな 相棒」と応じる父(2枚目の写真)。最後は、父が「今は、おとなしくしてろよ」と注意し、アンソニーが笑うところで幕を閉じる(3枚目の写真)。
  
  
  

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